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階名(移動ド)を使った、ポピュラー系音楽理論に関する学習ノートです。個人的に「こう理解したら分かった気がする」「ここがまだ分からない」といったことを、姉妹ブログ『Preference』では主題別に随想形式で更新しているのに対して、こちらではそれを踏まえてリファレンス形式で用語別に整理します。
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日本語: 調
ポピュラー系理論での慣用表現: キー
英語: key

◎言い回し・用例
日本語: ハ長調、イ短調など
英語: Key C, key of Amin., など

※ 音楽雑誌などで"key = C maj."などの用例を見かけるが、誤用と思われる。


◎概要

スケールなどと混同・混用されているせいか、楽理本などでは必ずしも内実がはっきりしない概念。慣用的に「メジャー・キー」「マイナー・キー」などの用例を見かけるが、調号(key signature)が表す内容などから察するに、本来はスケールとは別な概念だと思われる。

他方、日本語でも「ハ調」などと、調(キー)には長短の別があるかのような語法が慣習的に用いられている為、概念の内実はクラシックにおいてすら混乱しており、やはり長短の区別が可能なスケールと混同されている模様。むしろ、このようなクラシックにおける混乱がそのままポピュラーにも引き継がれている、と言うべきかも知れない。

上記を踏まえた私見では、キーとは「階名付けされた音の集合」のことであり、その集合に属する要素に当たる音を、特定の音から並べ替えることで得られるスケールからは区別されるべき概念。なお、ここで考える階名には、変化記号が付かない。

このように、スケール(音階)から区別するべき概念の為、東川清一は中国における楽理用語である「均」を移入し、用いることを提唱している。


◎詳細

キー(調)は、調号(key signature)によって示される。しかし、この調号を見たところで、俗に言う平行調(relative key、この用語は日本語、英語ともに問題を孕む、好ましからぬ言い回しと思われる)のうちの、いずれのスケール(音階)が用いられているのかは、判断できない。スケールの判定は、曲全体としてはケーデンスなどからトニックを判定する必要があるし、ポピュラーの立場でコード・スケールに注目する限りでは、曲の部分毎に判断しなければならない。このように複雑なスケールには、ダイアトニックではないものも存在し、調号だけで示すのは、そもそも不可能と言える。

調号が示すことが出来るのは、階名が対応する音名がなんなのか? だけである。すなわち、ダイアトニックな音の集合を定めるだけである。

調号に特段の変化記号がない場合は、階名の「ドレミファソラシ」は、音名の「CDEFGAB」に相当する。調号に変化記号がある場合は、最も右側に記された変化記号の種類と、それが示す音高から、各階名に相当する音名を判断する。

シャープは、階名のシに相当する音名を示す記号である。調号においては、左から詰めて

F C G D A E B

の順に書き記される。よって、たとえばDの音高を示す位置にあるシャープが最も右側に記されている場合は、F C Gにもシャープが付いており、D#が階名のシに相当する。よって、ドはEとなり、レミファソラシはE F# G# A B C#となる。

同様に、フラットは階名のファに相当する音名を示す記号であり、調号においては左から詰めて

B E A D G B C F

の順に書き記される。よって、たとえばDの音高を示す位置にあるフラットが最も右側に記されている場合は、B E Aにもフラットが付いており、Dbが階名のファに相当する。よって、ドはAbとなり、レミファソラシはBb C Db Eb F Gとなる。

キーの違いを区別するために、慣習的には階名のドが相当する音名が用いられてきた。たとえば、

Key C

という場合は、ドに相当する音名がCである。このキーだけでは、この調号の下に書き記された楽曲がC maj.なのか、A min.なのかは判断できないし、そのようなことを調号からのみ読み取ることは不可能である。

他方、英語では、key of A min.などの表記がなされる。これは、上記のようなキーの意味合いから察するに、「Aマイナー・スケールのキー」「Aマイナー・スケールにおけるキー」といった意味合いであると考えられるが、この語法を通じて、キーとスケールが同一視される土壌が用意されたと考えられる。実際、Key = A min.といった表記も音楽雑誌などでは見かける。しかし、これは上で見たようなキーの概念と照らした場合、飽くまで誤用と考えられる。

キーとは、階名に対応する音名の集合であり、調号によって示される。決してスケールではない。

個人的な意見だが、キーを区別する為に用いられる、ドに相当する音名を、「キーノート(keynote)」と呼んではどうか? と考えている。あるいはむしろ、これが本来の語源なのではないか? とすら推測している。英和辞書的にはkeynoteとtonicはほとんど同義語のようだが、スケール・ノートの名前やコードの機能に使われるトニックに対して、キーノートが楽理用語として使われるのは非常に稀であり、単語の中にkeyが含まれていることから、キーを区別する音を示す概念を表す上で、「キーノート」は非常に適した語であるように思われる。


◎課題

キーを巡る問題について、上のような意見を述べたところで、実際に音楽に関わる人々の語法が改まるわけではないため、現実にどのように使われ、よってそのような語法によってどのような概念が示されようとしているのか? に注意を払う必要がある。このような問題の一つとして、「メジャー・キー」「マイナー・キー」との言い回しがある。万一このような語法が、万一スケールのことを言い表しているのではないのだとすれば、これらの言い回しは端的に意味不明である。上記のように、「キー」は階名に対応する音を示すだけであり、それ自体には長短の区別など存在しないからである。
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趣味でベースをプレイしていたが、最近は実際の演奏やバンド活動から遠ざかっている。このブログでは、姉妹ブログ『Preference』で扱っている楽理関係のトピックを踏まえ、リファレンス形式で用語を整理。ただし、オイラの独学によるものなので、一般には通用しないかも知れません。
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